米子地方創生大学は「専門職大学」

12月8号では、「米子地方創生大学」(仮称)の創立に当って、「地元学を通じてアイデンティティを醸成」することを提案しました。集まる学生が出身地の故郷に想いを馳せ、いかにして故郷の産業振興を図るか、それによって人口流出を防止し、消滅市町村を回避し甦させるか、に主眼を置いたのが同大学構想です。

県内大学の県内就職は3割

先程、人口流出の防止と書きましたが、こんな報告があります。第9回鳥取創生チーム西部会議で示されたデータです。 それによると、社会減の原因は、10―20代の県外転出とし、平成27年は転出超過数が1300人で、内10―20代が1524人(117%)を占めています。平成28年も同様の人口動態です。一方で、0―9歳と30代、50代以上では転入超過となっています。
そして県内大学などの卒業生の県内就職は平均3割程度で、大半は県外に転出しています。関西圏の転出が多く、20代では東京圏への転出が増加してます。県内就職の実態は平成28年の環境大の県内は55名(22・9%)、鳥大は県内135名(20・2%)、鳥取短大が県内162名(73・6%)で、平均31・2%しか県内に残りません。
高卒の進学は7割で、その内、県外への進学が約7割となっています。
県外への進学を希望する理由として、「希望する学部学科が無い」が33・8%と最も多くあります。
大学卒業・就職時に、過去に県外大学進学者に県内就職を考えなかった理由は▽自分の付きたい仕事が無かった(23・6%)▽知識や資格・技能を活かせる企業が無かった(19・8%)▽給与が低く魅力が無かった(16・9%)▽都会で生活したい・県を出たかった(26%)などとなっています。給与の問題は意外と低く、雇用のミスマッチが主因であることが分かります。 ところが、驚くことに県出身者の約7割がUターンを考えています。一方で、県内就職者の学生は約3割となっておりギャップが大きくなっています。Uターン希望が7割もあることは、地方創生大学の存立基盤として重要なデータと言えます。 こうした状況に対し、鳥取地方創生会議では、▽学生への地元魅力企業の発信力の向上▽ふるさと教育の推進などを挙げています。地元学の推進です。

若者の流出「逆張り」で阻止

人口問題から考えると、2018年あたりから全国が本格的な人口減社会に入り、2030年には人口の3分の1超が高齢者になり、18歳人口は30年には100万人を切るとまで予測されています。
大学で学ぶ年齢層の18―22歳代が急速に減少して行く中で、一つの疑問をもたれるでしょう。それは「若者の人口減で大学が成り立つのか」ということです。
この点については、再三言っているように「魅力ある地元学」による地方創生大学で、鳥取県も指摘しているように「ふるさと教育」による「ふるさと愛の醸成」です。まずこれが一番でしょう。
つまり、若者の人口流出を阻止するには、「将来若者が少なくなるから大学創立を止める」のではなく、逆に地元に魅力ある地方創生大学を創り、流出を阻止する、という逆転の発想が必要なのではないでしょうか。何といっても県外進学者の約7割がUターンを希望しているわけですから。地元に役立つ大学としての魅力づくりと、産業振興で就職先を拡大しなければなりません。そして魅力ある職業創りは、地方創生大学卒業生が任うことになります。

新カテゴリー「専門職大学」

「米子地方創生大学を創りましょう」で、今年6月の内閣府決定の「まち、ひと、しごと創生基本方針2017年」を紹介しました。「地方創生に資する地方大学の取り組みを重点的に支援する」となっています。
一方、文科省はこれを後押しするために、これまでにないカテゴリーの「専門職大学」(4大、短大)の設置を推進しています。これまでの大学は専門教育を教養教育や学術研究を併せもっていて、比較的学問的色彩が強かったのですが、「専門職大学」は企業での長期インターンシップや関連する職業分野の教育を通じ、高度な実践力や豊かな創造性を培う教育に重点を置いています。さらに産学連携による教育プログラムの開発にも力を入れ、より実践的な教育を目的としたものです。
この大学の良いところは4年制大学と同じ学士号の取得ができ、短大部門もあることです。さらに前期課程を終了後、一度社会に出て働きその後、後期課程で再入学できます。また他の高等教育機関などから編入学することもでき、長寿社会に突入するなか途中で、「学び直し」(カレント教育)も可能になります。
入学については実務経験や保有資格、技能検定の成績を勘案し、学生も教育も多様性を重視します。どんな専門職大学が想定されるかというと、業種分野は限定されません。例えば観光、農林業、ITなど、1次産業から3次産業まで幅広く対応する大学となります。
実務大学という特性を生かすため、教員の4割以上を実務家教員としており、博士号の取得者を主力としていません。そして入学試験も多様性を確保するために、各専門職大学に任せます。
この大学制度は既にスタートし、2019年には最初の専門職大学が開学します。島根県では「島根保健福祉(保健科学)」が奥出雲町に開設される予定です。
19年度新設予定は13校になっています。3大都市圏は「工科」「国際ファッション」「保健医療」が多くありますが、地方になると「医療福祉」「看護保健」「健康」などといった、高齢化社会に対応した学科が目立ちます。中には「動物看護」「歯科衛生」「食育」などユニークなものもあります。「米子地方創生大学」は商都・米子の伝統を引き継ぎ、産業振興をベースに1次産業から3次産業、そして起業家育成まで幅広く対応する学科構成を考えています。その際、周辺の専門学校や大学校、大学などとは学生の奪い合いにならない教育プログラムにし、むしろ連携しながらの教育プログラムにしなければなりません。
そもそも経済都市・米子に社会科学系の大学・学部が無いということ自体がおかしいのです。
一方で、地方にあってもグローバル化に伴う人材養成の必要性も叫ばれています。それは境港が北東アジアのゲートウェイとして位置づけられているからです。北東アジアの経済や言語なども視野に入れなければなりません。
次回は「米子地方創生大学」の内容を少しでも詳しく説明できたら、と思います。